1978年以来、ヤマハのバイクラインナップの中でも特に愛され続けてきたSR400が生産の幕を閉じます。こちらの記事ではその終了理由や栄光に満ちた最終モデルについて、未来への再誕生の可能性も含めて解説していきます。その復活への期待についての考えもお伝えするので、どうぞ最後までご覧ください。
SR400の復活の可能性は?
SR400がもう一度復活する可能性はあるのでしょうか?私は可能性があると思っています。ただし、ヤマハの公式的な立場は、「これは本当の生産終了であり、復活する予定は無い」と明言しています。
しかし、私が復活を信じる理由には先ほど触れた、「ヤマハは過去に生産終了を宣言した後も、時代の規制変更に合わせ、SRシリーズを何度も蘇らせてきた」実績があります。
さらに、SR400には熱心なファンが大勢います。もともとファン層は厚いものでしたが、今回のファイナルエディションの発売により、新しいファン層も獲得したことは間違いありません。
過去にSRに乗っていたライダーたちも、懐かしみながらSRへと再び戻ってきた人が多数います。そして、彼らは復活を望んでいるに違いありません。
人が亡くなると、ある種の神格化が起こることがありますよね?しかし、いくら望んでも人間は、科学がどれだけ進んでも復活するわけにはいきません。
しかしバイクの場合、復活を望む人々が数多くいる場合には、復活は全くあり得る話なのです。
生産終了から復活を遂げたバイクたち
以外にも、「復活の可能性があるのでは?」と推察する根拠は存在します。実は、一度生産終了が決定したにもかかわらず、その支持が厚いことから再び生産ラインに戻ったバイクが数例存在するのをご存じでしょうか?
ヤマハ「セロー250」の足跡
山野を駆けめぐるオフロードバイクの新潮流を確立したヤマハ「セロー250」について触れたいと思います。このバイクはオフロードの代名詞とも言える存在です。
- 排気量250cc
- ヤマハの長期にわたるヒット商品であり、SRシリーズと肩を並べる
- オンロードにもオフロードにも対応し、力強い走行を実現
- スリムかつ軽量で扱いやすい
初めて発売されたのは1985年で、「セロー225cc」として市場に出ました。しかし、排ガス規制の強化に伴い、2017年に一度は生産が終了しました。
それから1年後の2018年8月、ファンの期待を裏切らず再び市販されることとなり、復活を遂げたのです。とはいえ、残念ながら「セロー250ファイナルエディション」として発売された2020年モデルをもって、国内向けモデルの生産は完全に終了し、現在はSR400がたどった道と同じく、生産がストップしています。
今もなお、そのカムバックを切望するファンが大勢おり、SRと並んで、根強い人気を保っているのです。
ホンダ「モンキー」の魅力
半世紀以上にわたり愛されてきた愛着深いバイク、ホンダ「モンキー」は、その遊び心溢れるデザインで「ゴリラ」と共に長年高い人気を誇っています。
- 排気量は125cc
- デザインはかわいらしさとカッコよさを兼ね備えている
- スタイリッシュでオシャレ
- コンパクトサイズで取り回しがしやすく、足つき性に優れている
しかし残念ながら、2017年には排ガス規制のため生産終了が発表され、モンキーファンは大きな悲しみに包まれました。
ですが、その悲しみも束の間、2018年には50ccからクラスアップして125ccへと排気量を増やし、新たなデザインで復活。モンキーよりも一回り大きなサイズとなり、再度バイクファンたちの間で人気を博しています。
カワサキ「Z1」の歴史
もともと「900スーパー4」と名付けられたカワサキの伝説的なバイクは、後に「Z900RS」として知られるようになりました。
1972年のデビューから、カワサキの「Zシリーズ」の草分けとして存在感を放ち、1972年から1976年の間、短い期間ながらも生産され続けました。わずか5年の生産期間にもかかわらず、その後の「Zシリーズ」に大きな影響を及ぼし、2017年には最新モデル「Z900RS」として再登場しました。
このバイクは、大型バイク市場でトップセールスを記録するなど、極めて高い評価を受けています。
- 排気量は948cc
- 日本国内に止まらず、世界的にも多くのライダーの心を掴む
- 外観の美しさと洗練されたデザインが魅力
- 見た目だけでなく、卓越したパフォーマンスを発揮
とりわけ最近では、新しい環境基準「令和2年排ガス規制」をクリアし、2023年には最新モデルが発表されております。
カワサキ「MEGURO」の魅力
かつて1927年から1964年にかけて生産され、その後半世紀を経て復活を遂げたバイク「MEGURO」。現在は「カワサキ メグロK3」の名で知られています。
- エンジンはゆとりのある排気量773cc
- SRを愛するライダーにぜひ目を留めてほしいクラシックスタイル
- 燃料タンクは目を引く銀鏡塗装で洗練された佇まい
- 「MEGURO」のロゴが施された立体的なエンブレムが特徴
- サイドカバーにも誇らしげに「メグロ」という文字が輝いている
スズキ「隼」の魅力
スピードを追求したバイク「隼」は、レース用のマシンに比肩する速さを誇ります。その最高速度は300km/hを超え、ほとんどの人が驚愕するレベルです。笑うほどの速さに、思わずあごが外れかねません。
- 排気量はなんと1300
- 見た目も非常にスタイリッシュ
- 強力な馬力を誇り、エンジン性能は非常にパワフル
- 一目でそのスピード感を感じ取れるほど
- 耐久性や機能性も抜群で、あらゆる点でトップクラス
2017年には排ガス規制の影響で生産終了が告げられましたが、2021年4月には日本で待望の復活を遂げました。
これだけ優れた性能を持つと、「初心者には乗りこなせないのでは?」と考えがちですが、幅広い層から支持を受けています。それは女性やバイク初心者、そして経験豊かなベテランライダーまで、快適な乗り心地を提供するからです。スペックにゆとりがあるため、ライディング時にも心に余裕が生まれ、楽しい時間を過ごせる秘訣となっています。
SR400についての概要
それでは、長きにわたって愛され続けてきたSR400について、ちょっと詳しくお話しします。
SR400は、製造開始から43年以上継続しており、生産台数は12万台を超えるほど人気のモデルです。このバイクの魅力は、そのシンプルかつクラシックな雰囲気にありますが、更に軽量でスリム、コンパクトな造りが特徴的。カスタマイズへの対応もしやすいことから、個性を反映させたいライダーに好まれています。
全てを始動させるには、往年のバイクに共通するキックスタートが備わっています。但し、SR400が魅力的なのは、そのシンプル基調から始まり、各ライダーの手によって一つひとつ異なるスタイルを創出する自由さにあります。
多様なパーツが利用可能であり、オーナーそれぞれが独自の変化を楽しむことができます。そのため、SR400の一台一台がオーナーの個性を映し出しています。元の姿でも十分その魅力を感じられますが、カスタムによってさらに「自分らしさ」を追求することができ、愛着を深めていくことでしょう。
SR400の製造終了について
SR400の生産が終了に至った理由は二つに分けられます。
主な理由
- 排出ガス規制を満たしていないこと
- ABSを搭載できない問題
これらの問題を解決するためには、人的資源、物資、財政的な面でのコストが非常に高くつきます。長年、SRの特徴を維持するために基本設計を変更せずに生産を続けてきたSR400ですが、時代の変化による要求には残念ながら応えることが難しくなったのが現状です。
排出ガス規制による生産終了の要因
SR400が生産を終了する背景の一つとして、新たに施行される排出ガス規制をクリアできなかった点が挙げられます。2022年(令和4年)11月からこの規制が適用されることになっており、地球環境に寄与するためのものです。
適合させるには莫大な費用がかかるため、生産終了の決断に至ったのでしょう。この度施行される規制は、「令和2年排ガス規制」と称されています。少し紛らわしいですが、SR400は継続生産車に分類されるため、適用開始は令和4年11月となっています。
令和2年排ガス規制の適用時期
- 新型車(全排気量):令和2年12月から
- 継続生産車(原付一種を除く):令和4年11月から
- 原付一種の継続生産車:令和7年11月から
ABSが搭載できないことが生産終了へのもう一つの理由
生産終了に至るもう一つの要因として、ABS(アンチロックブレーキシステム)を搭載することができない点が挙げられます。ABSとは、急ブレーキ時にタイヤがロックされるのを阻止し、安全な停止を実現するシステムです。
ドライバーが予期せぬ危険を察知して緊急にブレーキをかけたとき、異常なスリップを避けてハンドル制御可能な状態を維持し、転倒リスクを減少させる役割を担います。
しかしながら、現行のSRモデルにはABSを取り付けるためのスペースが確保されていないため、フレームを大幅に再設計する必要があります。
さらに、ABSの義務化が比較的最近行われたこともあり、必要な部品が高額になっています。これに伴い、バイク自体の価格も高騰してしまうのです。これらの問題点から、現状の維持が難しいと判断され、生産中止の運びとなったのです。
新しい排出ガス規制とは
- 車載式故障診断装置(OBD2)の搭載が必須に
- 更に厳格化された「令和2年排ガス規制」の適用
車載式故障診断装置(OBD-2)の搭載が義務付けされる
車載式故障診断装置、通称OBD-2とは、何なのでしょうか。車が故障した際にドライバーへ警告を与えるため、警告ランプといった装置で異常を伝える機能を指します。
令和2年排ガス規制という厳格な基準
「ユーロ5」とは厳しいヨーロッパの排ガス基準を指すものです。このユーロ5を参考に「令和2年排ガス規制」が策定されました。
ユーロ5とは何か?ユーロ5は地球温暖化や大気汚染を抑制するための取り組みで、バイクや自動車の性能を国際レベルで統一する規制のひとつです。
自動車における国際基準調和の流れ世界中で支持される日本製自動車やバイク。それらを海外で販売するには、ユーロ5といった国際基準に準拠する必要があります。それ故に、日本国内外での車両製造に関しても、令和2年排出ガス規制、つまりユーロ5に合致させていくことが求められています。令和2年排ガス規制に準拠していない車両は、2022年11月をもって生産を終えなければならない状況です。
この制度の導入はユーロ1から順を追ってきたもので、ユーロ2、3、4へと進化する過程において、日本の排ガス規制も従来より格段に厳格化されています。
排ガス規制の影響で生産終了するバイクたち
新たな排ガス規制の波が、バイク界にも影響を及ぼしています。SR400の生産終了は既に話題になっていますが、それにとどまらず、以下のバイクたちも生産終了の運命を迎えざるをえない状況となっています。
- CB400スーパーフォア/スーパーボルドール
- セロー250
- CB1100
これらのバイクに共通するのは、古くからの伝統を持つこと。しかし、名車であるが故に、エンジン設計が古いという事実が、新しい規制への対応を難しくしています。規制をクリアするためにエンジンの全面的な設計変更が必要となり、そのためには莫大な費用がかかってしまいます。その結果、生産コストが増大し、バイクの価格も上昇することが予想されるのです。
SR400 最終特別仕様と限定版の登場
ヤマハは2021年1月、SR400シリーズの集大成として「ファイナルエディション」を限定5000台で発売しました。その後、同年3月にはさらに特別な「ファイナルエディション・リミテッド」を1000台限定で市場に出しました。これらのモデルは、
- ファイナルエディション
- ファイナルエディション・リミテッド
として知られ、従来のSR400の性能を踏襲しつつ、塗装やデザインに独自のアップグレードが施されています。
SR400 ファイナルエディションについて
この特別なバイクは、限定生産で5000台が販売予定です。選べるカラーバリエーションは、上品なダークグレーと深みのあるブルーの2種類。価格は税込みで605,000円となっています。
SR400 ファイナルエディション リミテッド
- 数量限定で販売: 1000台のみ
- 選べるカラーはブラック一色に限定
- 価格は74万8000円(税込)
このリミテッドモデルにはいくつか特別な特徴があります。
- タンクにはサンバースト塗装が施されており、中央から外側に向かってグラデーションがかかっています
- エンブレムは真鍮製の音叉マークが使用されている
- アルマイト処理された新色ブラウンのホイールリムが採用されています
SR400のファイナルエディションが市場に残した深い印象
かつてヤマハは、特別な記念日や企業の歴史にちなんだ「スペシャルエディション」や「リミテッドエディション」など、特別なモデルを数多くリリースしてきました。
しかし、「ファイナル」という単語が冠された製品は今回が初めてで、これがSR400の生産終了を告げるサインであることは明白です。
43年間にも及ぶ長い歴史を経て、環境規制の壁にも立ち向かいながら生き残ってきたSR400ですが、新車の姿を見るのはこれが最後というのは残念ながら事実のようです。
その最終モデルであるファイナルエディションの売れ行きは非常に好調でした。この影響を受けて、SR400の中古車市場において価格が高騰し続け、中古相場のピーク時には約83万円にまで価格が跳ね上がりました。
最新のファイナルエディション新車は現在、一部業者によって100万円前後の値が付けられている場合もありますが、実際の定価はそれよりも低いことは先述のとおりです。
これは、そのバイクがいかに求められ、プレミア価値が付いているかを示しています。SR400は元来、軽量で足つきが良く、バイク初心者でも扱いやすいという特徴を持ち、若者が手が出しやすい価格帯も魅力でした。しかし、価格の高騰により、「若いライダーにとって手が届きにくくなるのでは」という懸念の声も上がっています。
SR400は危機を何回も乗り越えてきた
SR400は過去に何度も生産を停止する危機に陥りましたが、都度改良を重ねてその難局を切り抜けてきました。具体的にSR400は二度の生産終了を経験しています。
- 2001年、排ガス規制に対応するためエアインジェクションを導入して生き延びました。
- 2008年には30周年を記念する限定モデル「SR400 30th Anniversary Limited Edition」が発売され、その後排ガス規制により生産終了が宣告されました。
- ただし、2009年末にはフューエルインジェクションを搭載し環境対応モデル「SR400 F.I.モデル」が復活しました。
- 2017年、国内の排ガス規制がユーロ4を参考にしたものに改められ、再び終了が宣告されました。
- しかし、2018年11月には排ガス規制に適合した「SR400 40th Anniversary Edition」が限定販売されました。
- 2021年、更なる排出ガス規制により、国内モデルの生産終了が決定。「Final Edition」と「Final Edition Limited」が発売されました。
このような経緯を辿ってきたSR400ですが、疑問が湧き上がることがあります。ヤマハは生産終了を宣告しながらも、再び規制に適合させて復活を遂げることが多いのです。ただし、「コスト的に無理だ」「デザイン上の問題で対応が難しい」といった意見を持つ人も存在します。(誰でしょうか?笑)
二輪車排出ガス規制への対応には多額のコストが必要であり、さらに2021年10月から義務化されるABSの搭載がデザイン面での課題を生むと予測する声も上がっています。
まとめ
SR400は「令和2年排ガス規制」の影響で製造中止となり、ヤマハ社はSR400の復活について「現時点での計画はない」と明言しました。ですが、将来の出来事を予測することは誰にもできません。
確かにヤマハは現在のところ、復活させる意向はないと述べていますが、それもその時点での話に過ぎません。過去には半世紀以上の時を経て復活を遂げた「カワサキ メグロ」の例もあります。もしかすると、私たちは新たに生まれ変わるSR400をいつか見ることができるかもしれません。