かつてバイクのスカチューン文化が盛り上がったのは随分前の話です。とはいえ、今もなおFTRやTWといったバイクにその風潮の痕跡を見ることができます。街を行くそれらの車両は、かつての流行を彷彿とさせます。
その一方で、今日に至るまでもスカチューンをこよなく愛する熱心なファンたちが存在しているのも確かです。
その独自のカスタムスタイルを振り返ると、一体何がそこには楽しみとして秘められていたのでしょうか。
スカチューンとは?
バイクに乗る人であれば、スカチューンに関心がない初心者や経験豊富なライダーでも、その独特のチューニングスタイルには目を引かれたことでしょう。
特にスカチューンが施されたバイクは、特定のカテゴリーに属していることが多々ありました。
人気のある空冷単気筒バイクのカスタム対象
カスタムの対象としてよく選ばれるのは、木村拓哉さんがドラマ内で使用していたTWを筆頭に、ホンダのFTRやスズキのグラストラッカーなどが挙げられます。SRシリーズをスカチューンに改造している例も見受けられますが、バイクの楽しみ方には個人差があるようです。私個人としては、15年以上前に中古でエイプを手に入れた際、スパトラを装着したサイドカバーのないスカチューン風のスタイルでしたが、その後サイドカバーを追加するなど、自分なりのカスタマイズを施してきました。
スカチューンのカスタムの特徴
スカチューンでは特有のカスタムが多く見受けられます。例えば、サイドカバーを撤去してパワーフィルターを取り付けたり、フェンダーを取り除くフェンダーレスの施工、さらにラウドな音色のスーパートラップマフラーの採用などです。
他にも、より大胆な改造には「ロンスイ」の名称で知られるロングスイングアームのカスタムもあります。特にTWシリーズはキックペダルを備えているため、バッテリーを取り外したバッテリーレスのスタイルまで実現できることが魅力です。
愛好家の中には、さらに踏み込んで、シートを薄型に変更したり、小型のウインカーに交換することで細部にわたるカスタムを施すこともあります。
近年のスーパースポーツ(SS)バイクのフェンダーが細く小さくデザインされていることや、動画サイトで海外のバイク愛好家がレストアの際にフェンダーを切断し詰め込む様子などからも、スカチューンに限らず、バイクのスタイルが時代の流れに沿ったものであることが推測されます。
シンプルなスタイルの追求
高い排気効率を持つスーパートラップの採用により給気補助としてパワーフィルターが必須となることは理解できます。しかし、サイドカバーまで取り除く行為はバイク本来の形状に手を入れることに他なりません。
このアプローチが当時求められたデザインセンスを反映していた可能性も考えられます。
フィルターボックスを撤去する過程でサイドカバーの爪を損傷してしまったり、固定ボルトをなくしてしまい、結局再取り付けするのが面倒になったなどの経緯を経てサイドカバーを省くこともよくある話です。
しかし、スカチューンにおいては、初めからサイドカバーを取り付けない方針が敢えて設定されています。
スカチューンの「スカ」という語は「スカスカ」を意味し、不要な部分を取り除いてしまうミニマリズムのコンセプトに共通する点も見受けられます。
ただし、このコンセプトの対象はバイク乗りであるため、その意図は異なっているでしょう。
バイクの機能性向上を目指す側面では、取り回しや燃費の改善をもたらす軽量化も重要なメリットとして挙げられます。
スカチューン:単気筒バイクのカスタムカルチャー
かつての道路ではスカチューンを施したバイクが活発に走り回っており、その多くはTWやFTRといった単気筒エンジンを搭載したモデルでした。スーパートラップマフラーは、多くのライダーに選ばれており、使用するディスクの数で排気性能を調節していました。現代では好まれないことが多いこの機能ですが、当時は単気筒バイクに多く取り入れられていました。
スカチューンの外観的特徴としては、軽量化された市販バイクをさらに軽く仕上げるデザインが一般的。カスタムの成果は繊細でシンプルなスタイルを作り出しています。機能的にも吸気と排気効率を改善している点が挙げられます。一言で言えば、無用な部分を削り落とす極めたカスタムとも評されます。
単気筒バイクの魅力における軽量性は、重要な要素です。TWやFTRはファッションバイクとしての位置付けも可能な存在で、そのままでも充分に魅力的なビジュアルを持ち合わせていましたが、さらにその独自のスタイルを追求したカスタムが施されていました。
当時、スカチューンは単気筒バイクの真髄を極限まで磨き上げたカスタムと言えるでしょう。シングルエンジン特有の軽やかな走りとパルス感あふれる鼓動が、未来へのメッセージを伝えてくれたのかもしれません。