エンジンの圧縮圧力の測定にはコンプレッションゲージという特別な道具を用います。この道具の使用法について、圧力の読み取り方から具体的な操作方法に至るまで、このテキストが詳しく説明します。
圧縮圧力の単位について頭を悩ませている方、実際に測定したものの、その操作が正しいのか不安を感じている方も多いかと思います。そんな疑問を持つ方々のために、この記事が役立つ内容となっていますので、どうか最後までご覧になってください。
コンプレッションゲージの使い方は?
コンプレッションゲージに表示される単位は、ゲージの種類によって異なります。複数存在する圧縮圧力の単位によって混乱している方も少なくないでしょう。このため、ここでは単位の解説と、エンジンを始動するために必要な圧縮圧力の基準についてご紹介いたします。
エンジンの圧縮圧力に用いる測定単位
- kpa
- kgf/㎠
- psi
- Mpa
エンジンの圧縮圧力測定には、kpaやkgf/㎠を用います。これらの単位はサービスマニュアルで使われることが多いです。しかし、コンプレッションゲージには別の単位で表示されている場合もあるため、単位が異なる際には変換が必要です。変換の目安としては、1kpaは0.010kgf/㎠、0.145psi、0.001Mpaとなります。
一般的にエンジンの圧縮圧力はおおよそ1000~1500kpaであるため、1000kpaは10.1kgf/㎠、145psi、1Mpaに相当します。日本では「○○キロ」という表現でkgf/㎠を指すことが一般的です。kpaは国際基準で「パスカル」とされ、kgf/㎠は「キロ」、psiは「ポンド」と覚えると理解しやすくなります。
エンジンの圧縮圧力とその重要性
車のエンジン状態をチェックする際、またはエンジンが始動しない時に、コンプレッションゲージを使用して圧縮の有無を調べることがありますね。圧縮圧力は、エンジンタイプや燃料タイプによって異なりますが、一般的なガソリンエンジンでは、通常1000~1500キロパスカル(kPa)、または10~15キログラム力/平方センチメートル(kgf/cm²)の範囲内です。
たとえば、圧縮圧力が13~14キログラムだと規定されている車で、実測値が10キログラム未満だとエンジンのパワー不足や始動性の低下を感じる可能性があります。5~6キログラムの圧力では、そもそもエンジンが始動するかどうかが怪しくなります。
圧縮圧力が基準値を下回りすぎるとエンジンが始動しにくくなる他、逆に高すぎるとノッキングといった他の問題が生じることがありますので、適正な基準値を把握しておくことが重要です。
また、圧縮比は圧縮圧力とは異なるので、混同しないようにしましょう。
圧縮圧力計の使用方法
圧縮圧力計を使用する際、留意すべきポイントが3つ存在します。それらのポイントに従って正確な測定を行う必要があります。
- 全てのスパークプラグを取り外し、バッテリーは十分に充電しておく
- 燃料供給と点火システムを切断する
- スロットルを完全に開ける状態に保つ
これらのステップを順に追って、使用手順を詳しく説明します。
1. スパークプラグの抜き取りと燃料供給の遮断
エンジンの圧縮測定を開始するにあたって、まず行うべきはスパークプラグの取り外しです。特に多気筒エンジンの場合、測定する際は抵抗になることを避けるために、全てのプラグを抜いておく必要があります。プラグをつけたまま測定を行うと、セルフスターターの負担が増えてしまい、クランクシャフトの回転速度が適切な測定値に達しません。さらに、バッテリーの状態が悪いと、スターターの回転速度が基準値に到達せず、正確な測定ができなくなるため、バッテリーの点検も欠かせません。
次に燃料供給系の遮断を行います。燃料ラインを遮断しておかないと、スパークプラグを抜いた状態でクランキングを行うと、燃料が噴出してしまいます。そのため、燃料系のヒューズを抜いたり、カプラーを外したり、燃料コックを閉じておくことが重要です。
2. コンプレッションゲージの取り付け方
コンプレッションゲージを取り付ける際に重要な3つの点があります。
- ゴミの侵入を防ぐ
- Oリングが劣化していないかの確認
- ネジのピッチを正しく合わせる
ゴミの侵入防止やOリングのチェックは基本中の基本ですが、特に注意が必要なのはネジのピッチの合致です。コンプレッションゲージには、同じ大きさのネジでもピッチが異なるものが存在するため、取り外したプラグと同じピッチのアダプターを使用する必要があります。プラグとアダプターのネジを合わせてみれば、一目でピッチが合っているかどうかが判断できます。psiと表記されたセットで販売されているコンプレッションゲージは、インチ単位など異なるピッチのものがよくあるため、特に注意が求められます。
アクセルをめいっぱい開けてエンジンをチェック
セルモーターを活用する際にアクセルペダルを最大限に踏み込むのは、アクセルが戻っている状況では引き込まれる空気の量が少なくなるためです。このため、圧縮されるべき空気が不十分でコンプレッションの測定値が低くなってしまいます。キャブレターのチョークバルブが抵抗になることがあるので、測定時には必ずアクセルを全開にしましょう。セルを数秒間作動させると、計測器の針が一定の数値に達してそれ以上動かなくなりますので、この時点で測定が完了となります。
コンプレッションゲージには逆止弁が備わっており、計測した圧縮空気が戻ってしまうことがないようになっています。そこで、ゲージに残存した圧を解放してから、何度か測定を繰り返してみることをお勧めします。
更に、エンジンが温まりピストンが膨張している状態での測定が最も正確ですが、熱くなっているため一般には推奨されません。とはいえ、冷えた状態でも基準値を満たす圧縮が得られるため心配は要りません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。