このウェブページでは、2017年5月モデルのNinja 650に装備されている6速マニュアルトランスミッションにおける、ギア比、駆動力、エンジンの回転数と最高速度との関係をシミュレーションで解説しています。
Ninja650の最高速は?ギア比と加速の絶妙な関係性
ER650H型Ninja 650の変速機に搭載されている、加速性能と最高速の伸びをうまく両立させるためのレシオカバレッジ2.864値は、6速MTの特長となっています。この仕様により、1速ギア(2.437)の時の最高速度が60.1km/hから出発し、6速ギア(0.851)では最高速度172.1km/hに到達する間に、速度差112.0km/hを4段階のギアを通じて徐々に上昇させる仕組みが成立しています。
ギア比の一覧表において、[]で囲まれた数値は、それぞれのギア比に対し一次減速比2.095と二次減速比3.066を掛け合わせた総減速比を示しています。
「シフトアップ回転数」に関しては、1速ギアで8000rpmで回転させた状態から2速ギアにアップすると、ギア間のステップ比(0.703)に基づいて、8000rpmから5620rpmに減速することを意味します。シフトアップ後の回転数が大きく減少し、パワーバンドを逸脱する場合は、8000rpm以上回転させることが加速感を向上させるかもしれません。逆にステップ比が小さい場合は、早目のシフトアップが望ましい結果をもたらすことが考えられます。
8000rpmにおける最大出力を発揮する際、6速ギアのギア比0.851では速度が172.1km/hに達し、時速100kmでの回転数は4650rpmです。172.1km/hという速度は運転免許証の枚数や命の数では補うことができないほどであり、バイクとしては高速道路を十分に走行できるものの、運転者自身の強靱な精神力が求められる状況です。
また、最高出力を発揮する回転数の約半分で時速100kmが達成されるため、高速道路を走行する際には「さらに上のギアが存在していれば…」と感じることがあるかもしれません。
750cc以下の100km/h回転数が低いバイク ランキング
巡航時の回転数を抑える方法としては、タイヤの外径を大きくする、フロントスプロケットの歯数を15丁から増やす、またはリヤスプロケットの正数を46丁より減らす、といった選択肢が考えられます。
レブリミットと最高速度|8000回転/分以上の速力
-
- 排気量750cc以下の車両の最高速度ランキング
最高速度を左右する主要因は最高出力ではありますが、ギア比やタイヤの直径、エンジンの回転数も考慮せずに語ることはできません。また、エンジンのレブリミット(いくつの回転数までエンジンが耐えられるか)については、そのエンジンが持つ特性や制御方式が多岐にわたるため、倍増されています。ここでは簡素化のため、最高出力が得られる8000rpmを基準に、10%増の8800rpm、20%増の9600rpm、30%増の10400rpmまでエンジンが回転した場合の速度がどう変わるかを表にしてみました。
ここで、6500rpmは最大トルクが得られる回転数を指します。
※エンジンのレブリミットは最高出力を発揮する8000rpmよりもやや高い回転数に設定されています。しかしながら、エンジンのパワーは8000rpmを最高点に減少傾向にあるため、8000rpm以降も加速が可能かどうかは確かではありません。
実際に達成される最高速度は、走行抵抗とエンジンの出力が均衡を保つ速度で決まります。オレンジ色でハイライトされた部分には、対応する回転数ごとの平均ピストン速度が記載されております。この速度は、エンジンの最大回転数に影響を与える要因の一つとされており、8000rpmで16.00m/sの速度から、回転数が増えるにつれて速くなっていき、10400rpmでは20.8m/sに達します。
巡航時のエンジン回転数に関する詳細
ここでは、6段変速ギアを搭載した車両における、1速から6速までの各ギアにおける車速とエンジン回転数の関係について見ていきます。
6速ギアを使用した場合、40キロメートル毎時では1分間に1860回転、60キロメートル毎時では2790回転、高速道路でよく見られる80キロメートル毎時では3720回転、100キロメートル毎時では4650回転、速度制限が120キロメートル毎時に設定されている場合では5580回転する必要があることになります。
なお、エンジンの出力や回転数、ギア比は密接にリンクしており、これらを実現できる車種は限定されるものの、スピードリミッターが作動する180キロメートル毎時では8370回転、さらに特定の車種に限られるながらも、300キロメートル毎時では13940回転にも達することがあります。
6500rpmと8000rpmにおける駆動力とトルク重量比
- 750cc以下の発進加速性能ランキング
- 発動機が最大トルク6.6kgmを発生するとき、ギアを通しての減速により、この値は大きく増幅され、結果的に初期の数十倍、数百倍へと変化します。
- 例えば、1速ギアにおいて発動機の軸トルク6.6kgmは2.437倍増しとなり、更に一次減速比と二次減速比で6.423倍増しとなって、タイヤの半径で割ることで最終的な駆動力が331.1kgmになります。
- このエンジンは8000rpmの時に68PSを生み出すため、その際の軸トルクは6.1kgmであり、同じ計算をすると最終的な駆動力は306.0kgmになります。
- 基本的に、この値が大きい程、地面を蹴って進む力が強まります。6500rpmと8000rpmとの違いが小さいほど、高回転時のトルクが低下することなく、加速感が維持されることを意味しています。
- 角括弧内の数値は、エンジンが最大トルクを発揮する6500rpmにおける、各ギア別の駆動力を車両重量193kgで割ったトルク重量比で、最小は1速ギアの0.58kg/kgmとなっています。
- この0.58kg/kgmという数値は、信号発進時に勝つことが珍しくないほどの加速性能を意味し、愛着は増す一方で、「このバイクに乗ることができて良かった」と感じさせてくれることでしょう。
- また、自動車の情報サイトで集計した平均的な1速ギアTWRが1.60kg/kgmであったため、名高いスポーツカーでさえも、瞬時に置き去りにするほどの激しい加速が期待できると言えます。
前後スプロケットと加速力および最高速の密接な関係
ここでは、パーツの有無や装着の可否については考慮せず、前後のスプロケットの歯数を変更することで、時速100kmにおけるエンジンの回転数、最大ギア比での8000rpm時の走行速度、1速時の最大駆動力が如何に変化するかを見ていきましょう。
フロントスプロケットの変更とその効果
ER650H型のNinja 650では、フロントスプロケットを標準の15丁から12丁に減らしたり、18丁に増やしたりする試みを行いました。純正の15丁では、100km/h走行時のエンジン回転数は4650rpm、8000rpmでの速度は172.1km/h、最大の駆動力は331.1kgmです。
12丁に変更すると、ギヤ比が低くなり、回転数は5810rpmに跳ね上がり、速度が137.7km/hに低下し、最大駆動力は414.0kgmに増加します。結果として、最高速を犠牲にして加速力が向上します。
一方で、スプロケットを3丁増やした18丁の場合、ギヤ比が高くなり、回転数は3870rpmに減少し、速度は206.5km/hに上昇、最大駆動力は276.1kgmに低下します。加速力を犠牲にして最高速が向上するという結果になります。
特に巡航時のエンジン負担が軽減され、最高速が向上し、燃費改善が見込める点が魅力です。ただし、エンジン特性や出力に適さない過度に高いギヤ比に設定してしまうと、発進時の大幅なパワーダウンが生じるリスクがあることに留意が必要です。
リヤスプロケットの変更の効果
ここでは、純正の46丁であるリヤスプロケット(ドリブンスプロケット)の歯数を変更した場合の影響について考察します。リヤスプロケットの歯数を減少させると、ギヤ比が上昇し、最高速度が向上します。逆に、歯数を増やすとギヤ比が下がり、加速性能が強化されます。しかし、リヤスプロケットは元来歯数が多いため、前輪のスプロケットに比べて1丁の変更が大きな影響をもたらすことは少ないです。
フロントを14丁にして加速を重視するか、16丁にして最高速を優先するかで基本方針を決定し、リヤスプロケットを微調整する方法や、フロントを15丁のままでリヤの歯数を変更して様々な走りの「味付け」を楽しむこともできます。スプロケット選びは考えだけでワクワクしますね。
※注意スプロケットの歯数を変更すると、車種によってはスピードメーターに誤差が生じ、車検非合格や思わぬスピード違反の原因になることがありますので、変更時には十分ご注意ください。