本稿では、2008年4月にモデルチェンジを行ったNinja 250Rの装備する6速マニュアルトランスミッションのギヤ比(歯車比や減速比)と、それに伴う駆動力やエンジンの回転数と最高速度との相関を模擬したシミュレーションについて説明していきます。
Ninja250Rの最高速は?ギヤ比と加速の絶妙な関係性
EX250K型のNinja 250Rにはレシオカバレッジ2.915の6段マニュアルトランスミッションが搭載されており、これは加速力と最高速度の伸びをバランス良く配分しています。
速度の観点から見ると、1速ギヤ(比率2.600)での最高速度は51.7km/hであり、反対に6速ギヤ(比率0.892)では最高速度が150.6km/hにも達し、この速度差98.9km/hは4つのギヤを使って段階的に加速していくことで達成されています。
ギヤの比率の下に記された[]内の数値は、それぞれのギヤ比と一次減速率3.086及び二次減速率3.071を乗じた総減速比を示しています。
「シフトアップ回転数」とは、1速ギヤで11000rpmまで加速され、シフトアップする際に発生する2速ギヤでの回転数を指し、1速と2速のステップ比(0.688)を基にすると11000rpmから7570rpmへと減速することを意味します。
ステップ比が大きければシフトアップ後の回転数が下がり過ぎてしまい、パワーバンドから外れるリスクがあるため、場合によってはシフトアップを遅らせることが加速に好影響を与えるでしょう。逆にステップ比が小さければ早めのシフトアップが速度向上に繋がる可能性があります。
最高出力を生み出す11000rpmでの6速ギヤ比0.892時の速度は150.6km/hとなり、100km/h走行時の回転数は7300rpmです。
150.6km/hは免許証の枚数や命の数では補いきれないほどの速度ですから、高速道路を走るには十分な性能をもつバイクですが、人には精神的なリミッターが求められることでしょう。
また、最高出力が出る回転数の半分よりやや上に当たる回転数で100km/hが達成されるため、高速道路などでは「もう1段上のギヤが欲しい」と思うことがあるかも知れません。
250cc以下で100km/h時の低回転数バイクランキング
巡航時の回転数を下げる簡単な方法は、タイヤの外径を大きくしたり、フロントスプロケットの歯数を14丁から増やしたり、またはリヤスプロケットの歯数を43丁以下に減らすといった手段が考えられます。
レブリミットと最高速度|11000rpm超の速度について
二輪車の性能を語る上で欠かせない要素の一つが、最高速度です。最高速度の決定要因として大きな役割を果たすのは最高出力であり、これにギヤ比やタイヤ径、そしてエンジンの回転数が密接に関わるため、これらを切り離して考えることはできません。レブリミット、つまりエンジンが安全に到達できる最高回転数は、エンジンの特性や管理システムに依存し、多くの変数が影響します。ここでは簡単に、最高出力を発生させる基準点となる11000rpmを出発点とし、10%増の12100rpm、20%増の13200rpm、30%増の14300rpmでエンジンが回転した場合の予想速度についての一覧を提供します。
なお8500rpmは、最大トルクが発生する回転数であるため、ここにも注目してください。エンジンのレブリミットは最高出力を上回る回転数に設定されるものの、出力は11000rpmでのピークを境に減少傾向にあるため、11000rpmを超えてさらに加速できるかは不明です。実際の最高速度は、車両が受ける抵抗とエンジン出力が均衡を保つ点での速度となります。
表中でオレンジ色で表示されている部分は、各回転数におけるピストンの平均速度を示しています。この速度はエンジンの可能な回転上限に影響を与える一因です。11000rpmでの平均ピストン速度は15.11m/sであり、回転数が増すにつれてその速度は上昇し、14300rpmでは19.6m/sに達します。
250cc以下の最高速ランキング
ここでは250cc以下のオートバイの最高速度をランキング形式でまとめた一覧をご覧いただけます。
巡航時のエンジン回転数と速度の関係
普段の運転において、各ギアがどの速度でどの程度のエンジン回転数を示すのかを見ていきましょう。6速ギヤを例に、さまざまな速度での回転数を見ていきます。
40km/hのときは、エンジンは2920rpmを指します。一方、60km/hではエンジン回転数は4380rpmに達します。高速道路でよく見る速度の80km/hを出した場合、エンジンは5840rpmまで上昇し、100km/hで走行した場合には7300rpmになります。さらに速度制限が120km/hの区間を走る際には、エンジンは8770rpmまで上がることが必要になります。
なお、エンジン出力や回転数、ギア比は密接に連動しており、最高速度に到達可能な車種は限られますが、知られる限りでは、スピードリミッターが作動する180km/hではエンジンは13150rpmを記録し、さらに特定の車種の場合、300km/h出すと21910rpmまで回転数が増加することになるでしょう。
8500rpmと11000rpmにおける駆動力とトルクウェイトレシオ
250cc以下のクラスにおける発進加速性能のランキングでは、エンジンが生み出す最大トルク2.1kgmが、歯車の減速作用によって増幅され、結果として何十倍、何百倍の力になるのです。
例えば、1速でエンジンからのシャフトトルク2.1kgmが、1速ギアで2.600倍に増し、一次減速比と二次減速比の作用で9.477倍になります。この値をタイヤの半径で除算すると、最終的な駆動力は168.6kgmとなります。
このエンジンは11000rpmで31PSを出力し、軸トルクは2.0kgmです。同様の計算を行うと、最終的な駆動力は160.5kgmとなります。
基本的に、この数値が大きいほど地面を強く押し出して前に進む力が強くなります。8500rpmと11000rpmの差が小さい場合、高回転時のトルク低下が少なく、加速感が持続することを示します。
括弧内の数値は、最大トルクが発生する8500rpmでの、トルクを車両重量168kgで割ったトルクウェイトレシオを表しており、最も低い1速ギヤでは1.00kg/kgmです。
この1速ギヤの1.00kg/kgmという数値は、バイクにおいては平均的な数値ですが、この数字が示すようなスタートダッシュは、息を呑むような快感を与えてくれることでしょう。
自動車に関するデータをまとめたサイトでの、1速ギヤのTWRの平均値は1.60kg/kgmであり、一般的な自動車と同等かそれ以上の発進性能を有していることになります。
前後スプロケットと加速力および最高速の熱烈な関係
本稿では、部品の有無や装着の可否を一旦置いておき、前後スプロケットの歯数の変更が車両の性能に与える影響を考察します。具体的には、時速100kmでのエンジン回転数、最も高いギヤ比での11000rpm時の速度、そして1速ギアにおける最大駆動力の変動を見ていくことにします。
フロントスプロケット変更の効果とリスク
EX250K型のNinja 250Rは、標準のフロントスプロケットが14丁であるが、これを11丁から17丁の範囲で変更することが可能です。
14丁のままでは、時速100km走行時のエンジン回転数は7300rpm、エンジン回転数が11000rpmの際の速度は150.6km/hとなり、最大駆動力は168.6kgmとなります。
もし3丁減の11丁に変更すると、ギヤ比が小さくなり、エンジン回転数は9300rpmに増加し、速度は118.3km/hに減少しますが、最大駆動力は214.5kgmに大幅に強化されます。その結果、最高速は低下しますが、加速性能が向上します。
一方、3丁増の17丁にすると、ギヤ比が逆に大きくなり、エンジン回転数は6020rpmに減少し、速度は182.9km/hに上昇します。しかしながら、最大駆動力は138.8kgmに低下し、最高速は向上しますが、加速性能は犠牲になります。
ギヤ比を大きくすることで巡航時の回転数が低くなり、最高速の向上や燃費の改善が期待できる反面、エンジンの特性や出力と釣り合わない設定になると、発進時の加速が非常に鈍くなるリスクがあります。
リヤスプロケットの変更と影響
次に、リヤスプロケットの変更による影響について詳しく見ていきたいと思います。元来43丁のリヤスプロケットを変更すると、歯数を減らすことでギア比が高まり、最高速が向上します。逆に歯数を増やすとギア比が低下し、加速力が向上します。ただし、リヤスプロケットはフロントスプロケットに比べて元の歯数が多いため、変更による影響はやや小さめです。主な目的としては、フロントスプロケットで大まかな性能の方向性を決定した後、リヤスプロケットの微調整により仕上げを行うことが挙げられます。また、スプロケット選びによって受ける楽しみも大きいでしょう。ただし、変更には注意が必要であり、特にスピードメーターに生じる誤差には留意して下さい。無車検であるからといって軽はずみに改造し過ぎると、スピード違反の原因や思わぬ事故に繋がる可能性があります。