最近フロントスタンドを購入したのを機に、バイクのフロントフォークのプロトラウト(伸び)を調整する作業に取り組みました。
実際に自らプロトラウトの調整をしてみた結果、バイクの挙動が予想以上に変わり、その変化に驚かされました。
この調整作業を通してバイクの機能に関する理解が深まっただけでなく、さらに自分の好みに合わせて乗り心地をカスタマイズできるということに気が付きました。
バイクのカスタマイズは自分自身で行うことで、より楽しみが増すことをおすすめします。
乗る喜びが増幅すること間違いなしで、バイクライフが今まで以上に楽しくなるはずです。
フロントフォーク突き出しの調整をして走行性を変える
多くのバイクオーナーは購入時の状態からフロントフォークの突出量を調整することなく利用しています。そのように考える人は、おそらくごく限られているのではないでしょうか。
私もバイク初心者の頃は、フロントフォークに手を加えることなど考えたこともなく、何か変更を加えたいと思ったら専門のバイクショップに依頼するものだと思っていました。
しかし、実際に自分で調整する方法について調べてみると、初心者でも十分に可能だということが分かり、自分のバイクをカスタマイズしてみたいと思いました。
挑戦すればするほど、バイクを自身の好みに合わせて調整できるので、少しでも興味がある方にはぜひ試してみてほしい。いや、試してみるべきです。
バイクの突出し調整後に感じた変化
各種理論にはたくさんの要素が絡み合い、私のような素人が限られた知識で的外れな解説をするのは適切ではありません。専門の知識を持った方が執筆した記事に目を通されることをお勧めします。ここでは私がバイクの突出し調整を行った後、実際に乗車して感じた実体験をお伝えしようと思います。
突出し量の変更による感覚的変化
私が体感した最も顕著な変化は、「セルフステアの強さの違い」でした。さまざまな突出し量でのテストは多くは行っていませんが、それでもその違いをはっきりと感じることができます。突出し量によっては、その変化が怖いほどに大きいこともあります。
フォークの突出し量と自己操舵性についての考察
これまでに自ら試した突出し量のバリエーションについての記録を以下に整理しました。
時点 | 突出し量 | セルフステアの度合い | 評価 |
---|---|---|---|
納車時 | 7mm | 強い | △ |
タイヤ交換時 | 0mm | ほとんどなし | 〇- |
初自分での調整 | 2mm | 少し感じる | 〇 |
フォークオイル交換時 | 3mm | 少し感じる | ◎ |
振り返ってみると、現在は表の最下行の設定を採用しており、大変乗り心地が良い状態です。
中古で取得した当初の納車時とは明らかに異なる乗り味に変化しました。ただし、最終調整時にフォークオイルの交換やフロントフォークのメンテナンスを同時に行ったため、突出し量の調整以外にも要素が作用しているかもしれません。そのあたりを考慮して見ていただきたいと思います。
突出し量の変更はわずかなミリ単位であっても乗り感に大きな変化を与えることが可能です。1mmの変化も容易に感じ取れるため、10mmにも迫るような大幅な調整には少々躊躇させられるものがあります。もちろん、これは使用するバイクにより差異があるので一概には言えない部分もあります。
自らの手でフォークの調整を始める際は、初回は最大で5mmの突出を目安に始めることを推奨いたします。突出し調整はそのわずかな数値変更が、重量感あるバイクにとって大きな影響をもたらすことがあります。実際、驚くほどの乗り味の変化を体験することになるでしょう。
突出し調整における実務的配慮
もし非専門家がある程度の作業を手掛ける場合は、安全上の理由から適切な道具をそろえることを推奨します。特に突出し調整をするときは、前輪を持ち上げるのにフロントスタンドやジャッキが必要になります。
しかしながら、こういった道具は価格もそれなりに高く、費用対効果を考えるとそう頻繁に使うわけではないかもしれません。そのため、工夫次第で何とか対応する方法もあるはずです。
私がお世話になっているバイクショップの方に伺ったところ、彼らからは意外な一手が提案されました。
「バイクをサイドスタンドにかけたまま、バイクをサイドスタンド側へと傾ければフロントホイールは浮きますよ」という具体的なテクニックを教えてくれ、プロフェッショナルの知恵には感心させられます。
ただし、この方法を試すのは整備に慣れた人でないと難しいでしょう。私自身、実行するには少々勇気が要るため、最終的にはフロントスタンドを購入することに決めました。
必要な器具
バイクのメンテナンスに挑戦する初心者の方は、代用品よりも適切な道具を揃えることをお勧めします。そうすることで、メンテナンスの安全性が確保され、成功の確率も高まります。
- スタンド(フロントタイヤを持ち上げるためのもの)
- ノギス
- トルクレンチ(私が使用しているモデルは以下のリンクを参照)
フロントフォークの突出調整の手順について
「初心者でも成功するフロントフォークの基本的な調整方法」について完全なガイドを提供することはここではできませんが、大まかなステップを説明することはできます。しかしながら、ここで紹介する方法はあくまでも大まかな調整であり、プロのレーサーのような精密さは望めないため、細部に関する詳細な指摘はご理解いただきたいです。
- 作業をするのに十分な平坦なスペースを準備する
- フロントフォークを固定しているトップブリッジとアンダーブラケットのネジを緩めておく
- フロントタイヤを浮かせる
- 一方のアンダーブラケットのネジを緩める
- ゆっくりとトップブリッジのネジを緩める ── これによりフロントフォークが調整可能になる
- フロントフォークの突き出し量を調整する
- トップブリッジとアンダーブラケットを指定されたトルクでしっかり締める
- もう片方も同じ方法で調整する
- フロントタイヤを下ろして完了
- 試乗して確認
なお、この手順の間、タイヤは取り外す必要はありません。また、ステップ4と5の作業順は逆でも問題ないことに注意してください。重要なのは、2箇所で固定されているフロントフォークを同時に緩めすぎないことです。
この手順を一見すると、難しそうに感じたり、作業が多く見えることでしょう。私自身もそのように思うはずです。そして、挑戦するのが難しいと感じるかもしれません。しかし、もし実際に口頭で簡潔に説明したら、以下のように感じます:
- 前輪を浮かせる
- フロントフォークを固定しているネジを緩める
- 突出を調整して
- ネジを締め直す
これなら簡単に思えますよね。慣れればほんの数分で作業は完了します。全てのパーツを分解する必要もありませんので、多くの人ができる作業だと思います。
空気圧の適正化の重要性
車両のフロントフォークの突出し量を調節するにあたって、まずはタイヤの空気圧を標準値に合わせることが必要です。突出し量が多くなるほど車高は下がり、逆に少なくなると車高は上がるため、空気圧が適切でないと、突出し量による調整が正確に反映されません。
空気圧が不足していると、実質的に車高が下がることになり、突出し量の調整値が狂ってしまう可能性があるのです。特にNC750Sのようなバイクの場合、わずか1mmの違いでも運転の手応えが変わるため、その調整時には空気圧を指定値に正確に調整することが極めて重要です。
注意点2 – 安全性を最優先に
作業の精度を高めることも大事ですが、何より重視すべきは安全の確保です。特に初心者の方は、フロントフォークを固定しているトップブリッジやアンダーブラケットのネジ締めには、適切なトルクでの締め付けが必要不可欠です。
是非ともトルクレンチを準備することをお勧めします。締め付けトルクについては、サービスマニュアルを手に入れる、あるいはインターネットを検索して先に作業された経験者が公表している適正トルクを確認する等、情報を得る方法は複数存在します。何としても情報を手に入れてください。一般的なバイクであれば、インターネットを通じて容易に見つかるはずです。
緩すぎると走行中に位置がずれる危険がありますし、締めすぎると部品が破損するリスクがあります。このような部分が初心者にとっては手を出しにくいポイントかもしれませんが、適切な工具さえあれば安全に作業を行うことが可能です。
慎重に作業を行うためのポイント3
作業に慣れていないうちは特に問題は少ないはずですが、注意すべきことが一点あります。フロントフォークを支えるトップブリッジやアンダーブラケットのネジを一気に緩めてしまうと、フロントフォークが突然落下することがあります。今回説明している手順では、タイヤを取り外していないため、破損するほどではないとはいえ、慎重にネジを緩めて作業を進めてください。
ネジを少しずつ緩めながら、フロントフォークを回してみて、動かせるようになるタイミングを見極めます。適切な位置でフロントフォークが下がらず、回転することで調整が可能になるはずです。締め付けのトルクには微妙な差がありますので、落ち着いて丁寧に作業を進めてください。特に難しい作業ではありませんので、焦らず少しずつ進めれば問題ありません。
整備の要点まとめ
「突出し調整」は初心者には難易度が高く感じられることでしょうが、フロントタイヤを持ち上げることができるのであれば、基本的に誰でも取り組むことが可能です。タイヤをリフトアップするための装置があれば、挑戦してみる価値はあります。さらに、トルクレンチがあると安全に作業できますね。
突出し量の計測にはノギスを推奨しましたが、最初は左右を揃えることが重要なので、ノギスがなくても問題ありません。しかし、将来的にはノギスを使った精密な調整も目指したいものです。初めはシンプルなツールを使って左右が均等であることを確認し、徐々に精度を向上させていくのが良策です。
自分で整備を行う際には安全リスクが伴うため、何もせず専門家に任せる選択肢もあります。しかし、自己整備が可能ならば、バイクの理解が深まり、緊急時の応急処置ができるようになるかもしれません。
整備はマイナス側面だけでなく、慎重かつ丁寧に取り組めば、自分のバイクとの関係がより良好になります。ぜひ、この機会にチャレンジしてみてください。ロングツアーで疲れを感じさせないセッティングが完成したら、その感想を聞かせてください。では、楽しいバイクライフをお送りください!